コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2024/10/30

不安広がる新型強盗事件

▼首都圏などで相次ぐ「闇バイト」による一連の強盗事件に不安を感じている方は少なくないだろう。とくに一人暮らしや高齢者の不安はひとしおに違いない。いまや日本の安心・安全を脅かしているといっても過言ではない
▼とにかくその手口が狡猾で残忍極まりない。粘着テープで縛ってけがをさせるばかりか、死に至らせる事件も発生している。秘匿性の高い通信ツールが使われ、実行犯が捕まっても首謀者の顔まで見えない不気味さがある
▼以前のような手間のかかる特殊詐欺より、直接的な「強盗」に移行する者がこうした事件を起こしているとも言われ、犯罪においても悪しきイノベーションが起きている
▼それでも日本の治安状況を改めて考察すべきだと、千葉大学大学院の神里達博氏は指摘する。警察庁の統計では、日本で22年に交通事故を除く刑法犯によって亡くなった方は全国で598人。このうち殺人罪による被害者は254人、傷害致死罪が56人、強盗殺人罪が5人だった
▼これに対し国連機関のデータでは、米国は約2万2000人が殺人事件で死亡し、人口の違いを考慮した概算では、日本の28倍の犠牲者が出ている計算になる。さらにインドは12倍、フランは5・5倍、中国でさえ2倍に及ぶ。他国と比べても、日本の治安はまだ極めて良好と言える
▼国内に限っても、殺人事件は1954年の認知件数約3000件をピークに減少を続け、被害者数はこの15年でほぼ半分に減少。殺人など物騒な事件を日々耳にする割には、依然として世界最高水準の治安を誇っている
▼もちろん、そうした数値を並び立てたところで、治安は良いほど不安なく暮らせることに変わりはない。交通事故の犠牲者の半数が70歳以上の高齢者であることや、自殺者が毎年2万人以上に及ぶことなど、他の課題も多い
▼確率的には、交通事故のほうが強盗よりはるかにリスクが高い。凶悪犯罪は恐ろしく、許されるはずもないが、この世には多くのリスクが存在することを肝に銘じておくべきだろう。

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