2024/11/12
状況厳しい久留里線
▼JR東日本が先ごろ公表した2023年度の地方路線収支で、千葉県の久留里線の久留里駅―上総亀山駅間が、前年度に続き最も採算性の悪い区間とされた。同区間については、県と君津市、JR東日本千葉支社が検討会議を設置して交通手段のあり方などを検討しており、今後の議論が注目される
▼JR東が公表したのは、1日あたりの平均通過人員(輸送密度)が2000人未満の区間。本県では内房線館山―安房鴨川間など21、22年度と同じ4路線5区間が開示され、赤字の合計額は約45億6000万円だった。22年度の約40億6900万円からさらに赤字額が拡大した
▼100円稼ぐためにどれだけの費用がかかったかを示す「営業係数」では、久留里―上総亀山間が5区間の中で最も悪く、1万3580円となった。100円の収入のために135倍の費用がかかっている計算だ。平均通過人員は64人/日で、2億3500万円の赤字となった▼赤字額だけなら羽越本線の村上―鶴岡間の49億6800万円のほうが大きく、久留里線の赤字が突出しているとは言えない。ただ平均通過人員は1423人おり、営業係数も945円にとどまる
▼単純に利用者が少ない区間では、陸羽東線の鳴子温泉―最上間が最少の51人/日。営業係数は1万3465円、赤字額は4億3900円で、久留里―上総亀山間と比べても、営業係数に大差はなく、赤字額ははるかに大きい
▼このように、営業係数で苦しむ区間、赤字額で苦しむ区間、利用者の少なさで苦しむ区間と、状況はさまざまだ。利用者が少なくて営業係数が高くなっているところや、経費がかさんで赤字額が大きくなっているところなど、理由も多様だ
▼JRは現在、新幹線や都市部の通勤輸送、都市部の不動産開発などによる収益を重視している。鉄道よりも効率性が高く低コストな輸送手段を提起したいのもわかるが、数字だけで閑散線区を切り捨ててほしくない。都市と地方の格差や分断が広がっていく先行きにも目を向けてほしい。