コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/02/20

「日本博覧図」

▼私事で恐縮だが、筆者は学生時代に歴史を専攻していたこともあって、若いころから休日などにときどき寺社巡りをする。とくべつ宗教心があるわけでもないが、寺社に赴くと、なぜか心が落ち着く。日ごろの喧騒を忘れて、癒されもする。信仰に根差した施設とはいえ、歴史的価値が高く、文化財の宝庫ともいえる
▼百年前の名勝旧跡や寺社などを集めた「日本博覧図」なる銅版画集の存在を何年か前に知り、そこに描かれた施設を実際に訪ねてみるようになった。豪農豪商の邸宅・庭園や会社・工場、公共的な施設はほとんどなくなっているが、寺社などの多くは現存している。基本的に伽藍の配置など当時とあまり変わらないものもあり、百年前の絵図(俯瞰図)と比較しながら散策するのも面白い。ただし、境内の外の様子は大半が驚くほどの変貌ぶりで、時の流れを痛感させられる
▼弊社のある県庁界隈にも、「県立房総のむら」の管理棟として復元されている県会議事場をはじめ、江戸時代末創業の高級旅館「梅松楼」とその別荘、さらには私立産婆学校なるものまであった。しかし、梅松楼は昭和20年の千葉大空襲により焼失、産婆学校も時代の流れで昭和18年に閉鎖されたという。まさに“うたかたの夢”の思いを禁じ得ない
▼この「日本博覧図」は、明治半ばの関東を中心に様々な施設を掲載したもので、掲載希望者を募って、明治21~30年の10年間にわたり計12編余りが編集された。千葉県は明治27年に第9編として初編、29年に第11編として後編が発刊された。いまでいうガイドブックのような意味合いもあったのだろう。絵図の一部は県立中央博物館のホームページ(デジタルミュージアム)で閲覧できるので、興味のある方はぜひご覧あれ。

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