コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2023/03/29

世界一導いた結束

▼これほどうれしい出来事は滅多にあるものではない。第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表「侍ジャパン」の優勝に、日本中が沸き返った。前回優勝の米国代表を破っての優勝だから、悲願の世界一と言うほかない
▼2週間の濃密な大会期間で、スポーツの豊かさと多様性を改めて感じさせられた。すべての歯車がかみ合い、終わってみれば無敗での優勝。絵に描いたような「侍たち」の活躍ぶりにはどんな称賛の言葉も足りない
▼幸運にも、今大会の日本代表には精神面とプレー面で2人のリーダーがいた。精神面では、チーム最年長のダルビッシュ有(パドレス)が2月の強化合宿から参加。「楽しくやるのが野球」「戦争に行くわけじゃない」と、仲間を過度な重圧から解き放った。練習中も年下の選手たちに歩み寄り、変化球の投げ方やトレーニング方法を教え合う雰囲気を作り上げた
▼プレー面で大きな刺激をもたらしたのは、言うまでもなく大谷翔平(エンゼルス)だ。規格外の存在感で、世界一奪還をなかば義務づけられたチームに安心感や心強さを与えた。決勝の試合前の円陣では「きょうだけは憧れるのはやめましょう」「(米国には)誰もが聞いたことのある選手たちがいるけれど、憧れてしまったら越えられない」。この言葉で日本代表の士気は一気に高まったという
▼大会を通じ、チームはこれ以上ない「化学反応」を起こし、結束力が醸成された。栗山監督は「いろいろな選手が心を通わせてやってくれた」と選手たちをたたえたが、短期間でも一丸となって戦えるのが日本野球の良さであり強みでもあることを、監督も選手も熟知していた
▼決勝戦の最後は、1点リードの九回2死で大谷がエンゼルスの同僚マイク・トラウトを迎えるという劇的な展開。フルカウントから外角スライダーで大打者のバットに空を切らせた
▼栗山監督が口にする「野球の神様」は、本当にいるのではないか。いるに違いない。そう思わせる見事な世界一奪還だった。

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