コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2023/10/17

移動する「日本のへそ」

▼日本の人口重心を示す指標に「日本のへそ」がある。人口重心は、一人ひとりを同じ体重として全体のバランスが取れる仮想的な地点を指し、これが人間の身体で言えば「へそ」に当たる。「へそ」とは、意味を知れば言い得て妙だが、その推移からは首都圏への人口集中という問題も浮かび上がる
▼先に総務省が発表した日本の人口が釣り合う「人口重心」は、岐阜県の関市となった。5年ごとの国勢調査に合わせて割り出されるが、今回の調査は2020年の国勢調査によるもので、関市内は00年調査から5回連続で選ばれ、長らく「日本のへそ」に君臨している
▼ただし首都圏への人口集中で「重心」は徐々に東南東方向に移る傾向にあり、次回の25年調査では関市外に動く可能性が大きくなっているという。今回の調査では、市立武儀小から約4・5㎞の関市中之保の山間部にある地点が「重心」、つまり「日本のへそ」となった。前回調査(15年)からは南東に2・2㎞、前々回調査(10年)から前回調査は南南東に約1・6㎞移動した
▼「日本のへそ」は1965年以降、一貫して岐阜県内に位置。比較可能な記録が残るのはこの65年調査からで、同年は旧美山町(山県市)、それ以降も岐阜県内が続いてきた。関市内に移る前の95年は旧美並村(郡上市)だった
▼5年後ごとの「重心」の移動距離は65年から70年に東へ約8・3㎞移動したのが最長で、その後は約1~3㎞の移動となっている
▼日本地図を見ても分かる通り、岐阜県は国土のほぼ中央に位置し、全国で数少ない内陸県の一つ。県庁所在地の岐阜市は、東京から新幹線等で約2時間、大阪からは同じく約1時間、名古屋からは在来線で約20分の位置にある
▼とはいえ、東京などへの人口集中を背景に、「重心」はおおむね東南東方向に数キロずつ動き、2000~20年には約8㎞移動した。今回の調査ではさらに関市の隣の七宗町との境界まで約500mに迫っており、次回の調査では関市が「へそ」の座を明け渡す可能性が強まっている。

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