コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2023/11/02

過去最悪のクマ被害

▼このところ、クマによる死傷者のニュースを連日のように耳にする。4月以降の死傷者は22日現在で160人にのぼり、過去最悪だった2020年度を超えたという。背景にあるのは、餌となる木の実の不作やクマの生息域の拡大、個体数の増加。クマの冬眠時期は12月ごろとされ、まだしばらくは厳重な警戒が必要だ
▼環境省によれば、今年4~9月に15道府県で109人がクマに襲われ、うち2人が死亡している。国が統計を取り始めてから過去最高だった20年度同時期の86人を上回った。10月に入っても、長野県や富山県、岩手県で死亡事故が起きている
▼出没件数が昨年度に比べ150%以上増加しているのは、9月末現在で北海道4人、秋田県52人、青森県11人、長野県10人、岐阜県4人。とくに秋田県は、被害者数が昨年度の8倍を超えている
▼第一の理由として、クマの生息域の広がりが挙げられる。人口減などにより耕作放棄地やクマが隠れやすいやぶが増加したため、生息域は03年度比で約1・4倍に拡大したとの調査報告もある。個体数も増え、27都府県におけるツキノワグマの生息数は約4万4000頭と推定され、12年度の約1万5000頭から約3倍に増えた
▼クマに遭遇した場合の対処法は、クマが遠くにいる場合「落ち着いて、静かにその場から立ち去る」、近くの場合「クマを見ながらゆっくり後退するなど落ち着いて距離をとる」、至近距離の場合「うつぶせになって顔と腹部を守り、首の後ろに手を回して保護する」。しかし、至近距離の遭遇で落ち着けと言われても極めて難しい。自分ができるかと言えば、まったく自信がない
▼もともとクマは草食傾向だが、近年では北海道で牛を襲うヒグマが話題になった。エゾシカの死体を食べたために肉食に傾いたのでは、とみる向きもある。一時激減したエゾシカを保護し増やしてきたことや、放牧のために森を切り開いてきたことなど、人間活動が自然のバランスを崩してしまった現実を改めて直視すべきだろう。

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