2025/05/16
災害リスクの季節へ
▼大型連休を過ぎると、まもなく梅雨を迎え、季節は夏へと巡っていく。熱中症のリスクはもちろんのこと、夏から秋にかけては近年、台風や大雨の被害が頻発・甚大化し、気の抜けない季節が到来する
▼とくに8~9月は、台風の日本への近接数・上陸数が年間で最も多くなる。熱帯の海上で台風が発生するたび、こっちへ来てくれるなと願うが、無情にも日本に接近し、列島を縦断していくケースも目立つ
▼そうなる理由には、太平洋高気圧と偏西風の影響がある。低緯度の上空には、1年を通して太平洋高気圧の南側の縁で東から西へ向かう風が吹き、このため熱帯の海上で発生した台風は西へと進む。夏場には太平洋高気圧が日本の東側海上まで勢力を拡大することから、北半球の高気圧周辺で時計まわりの風が吹き、台風は高気圧の南側から西側を回るように北上する
▼さらに日本に近づいた台風は、西から東に向かって吹く「偏西風」の影響を受け、進路を東寄りに変え、北東へ向かう。このため、夏から秋にかけての台風は日本列島を縦断する進路をとることが増える。何とも皮肉だが、相手が自然ではやむを得ない面もある
▼以前はあまり聞くこともなかった「線状降水帯」も、最近では耳慣れた言葉となった。狭い範囲に数時間にわたって百~数百ミリメートルの大雨をもたらすものだが、原因は積乱雲で、この積乱雲が同じような場所で発生を続けると集中豪雨となる▼複数の積乱雲が発生を続けるメカニズムは「バックビルディング」と呼ばれ、上空の風の流れにより積乱雲が風下へ移動し、そこから冷たい下降気流が吹き出すと、地面にぶつかって広がる。こうした現象が繰り返されることで、積乱雲の列ができ、数百キロメートルに達することもある線状降水帯となる
▼私たちは、こうした異常気象や災害に向き合いながら、日々生きていかなければならない。長いスパンでみる地球の未来予測はさらに過酷と言うほかなく、どんな手立てができるのか重い課題を突き付けられている。