2025/06/03
「富士山噴火」備え急務
▼日本の象徴というべき富士山。その偉容を目にすれば、多くの人は神々しさすら感じるだろう。その富士山の噴火に関する動きが近年、慌ただしくなっている。内閣府ではこのほど、火山灰への対策として防災指針をまとめ、気象庁も火山灰警報を導入する方針を決定した
▼富士山の大規模噴火は1707年の「宝永噴火」以降、300年以上起きていないが、781年以降では実に17回記録されており、とくに平安時代には800年から1083年までの間に12回の噴火記録が残る。噴火の合間には平穏な期間が数百年続くこともあるが、1707年以降大規模な噴火がないことを考えれば、いずれは直面する可能性が高い。また複合災害の恐れもあり、1707年の噴火は南海トラフ地震の49日後だった
▼噴火により大量の火山灰が噴出すると、東京や神奈川など広範囲で10㎝以上積もる恐れがあり、鉄道の運行や道路の通行などに甚大な影響が出ることが予想される。専門家などによる国の検討会の報告では、首都圏での対応として30㎝以上の場合が「原則避難」、30㎝未満が「自宅等での生活継続(住民は可能なら2週間分の備蓄)」をラインとした
▼そのうえで、国に対し火山灰の見通しといった情報の仕組みを整えるよう求めたほか、国や自治体に対して避難ルートの確保などを進めるべきとした。このほかにも、噴火直後の情報発表や噴火後の火山灰処理など多くの課題が指摘されている
▼1707年と同程度の噴火が起きた場合、降灰は静岡県から福島県まで11都県に及び、相模原市付近で30㎝以上、東京・新宿付近では3㎝以上と予測。除去が必要な火山灰は東京ドーム400杯分と想定されている
▼大規模噴火は、日本の都市が高度に成長してからは未経験の災害だけに、現実にはどのような被害が出るか予測も難しく、地震などに比べてなかなか実感が湧きにくい。それだけに今後、火山灰を観測する仕組みを早急に整え、国から自治体への情報提供や計画策定の支援を急ぐ必要がある。