コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2025/08/26

オジー・オズボーンと悪魔性

▼英国のミュージシャンで「メタル界の帝王」と呼ばれたオジー・オズボーンさんの訃報(享年76歳)は、ロック界のみならず世界中に衝撃を与えた。音楽シーンに残した輝かしい業績はもちろん、オズボーン一家のビバリーヒルズの豪邸でのハチャメチャな日常生活を追ったMTVのリアリティ番組『オズボーンズ』で茶の間の人気者となったことなども、その死の反響を大きくしたのだろう
▼2020年にはパーキンソン病を患っていることを公表し、闘病を続けていたが、先月5日には地元バーミンガムで最後のライブを行い、それから2週間ほどで旅立ったタイミングも、多くの人を驚かせた。〝生涯現役〟そのもので、見事な最期とも言える。ライブでは椅子に鎮座しながら、最後まで前に突き進むエネルギーを見せつけた
▼オジー・オズボーンが初めてその名を世に知らしめたのは、やはりロックバンド、ブラック・サバスだろう。1970年にリリースされたデビューアルバム『黒い安息日』で妖しくも生々しい歌声を披露し、ヘヴィメタルというジャンルの礎を築いた
▼恐怖を感じさせる低く重い音楽でありながら耳になじむメロディラインで、数々の名作を生んだ。ソロ活動に移ってからも、その破天荒な役柄を貫き通した
▼ところで、オジーとブラック・サバスの音楽はなぜ「悪魔的」なのかとの問いに迫る記事を目にした。それは「トライトーン」という2つの音を取り入れたからだという。かつて中世の聖歌隊から避けられ、「悪魔の音程」として知られる不協和な音程で、三全音、増四度、または減五度を指す。耳障りで不安定な響きを生み出すことから、長らく悪魔的なものとして敬遠されてきたそうだ
▼欧米などでは、私たちが感じる以上に不穏な響きに感じられるのかもしれない。ただしそれが逆に、ブラック・サバスの音楽に類例のない個性と独自性を与えたように思える。そうしたことも含めて、ますますミステリアスな存在が、ほかならぬオジー・オズボーンだった。

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