2025/10/09
うなぎと奈良漬け
▼いまや日本人の国民食と言うべき人気のカレーだが、酷暑で食欲減退気味だった今年は、ますますカレーを食べる機会が増えた方も多いのではないか。もともとカレーは西洋料理をアレンジした洋食のくくりだったが、現在では家庭料理のみならず、カレー専門店も多く、学校給食でも圧倒的な人気を誇る
▼ところでカレーに付き物といえば、まず福神漬けだろう。ほかに、らっきょうも添え物としてかなりの人気のようだ。あるアンケートでは、福神漬け派が63%、らっきょう派が37%だった。優勢だった福神漬けを押す理由は「味が良い」「食感がいい」「習慣」、一方のらっきょうは「食感が良い」「甘酢味が好き」「味が良い」の順で上位だった
▼カレー以外の食べ物にも付き物はあまたあるようで、例えば、うなぎに奈良漬けという組み合わせが知られているという
▼筆者は最近になるまで知らなかったのだが、百貨店の食料品売り場にたまたま漬物屋とうなぎ屋が向かい合っていて、漬物屋で奈良漬けを買ったところ、店員さんが向かい側を見て「うなぎには奈良漬けが合うんですよ」とのたまった。「へえ、そうなんですか」と返したものの、頭の中ではあまりピンとこなかったが、ならば試してみようと、思い切ってうなぎも買って帰った
▼調べてみれば、奈良漬けに使われる酒粕の酸がうなぎの脂分をほどよく抑えてくれるとある。奈良漬けには熟成酒粕由来の「メラノイジン」が含まれており、うなぎに含まれるビタミンやミネラルの吸収を助ける働きがあるという。また、ほのかな香りがうなぎの臭みを抑えてくれるとも書かれている
▼実際に食べ合わせてみると、確かに口の中がさっぱりし、口直しとしても最適だった。比較的味が強いもの同士なので、両者が主張しあい、逆に溶け合うような感覚もある
▼伝承によれば、奈良漬けの瓜は「うなぎ」の「う」がつくことから、江戸時代から「食せば健全なり」とされているとか。付き物には何事もそれなりの根拠があるものと知った。