コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2025/12/03

散逸する美術の行方

▼散逸した美術品や文化財が美術館や博物館などに収蔵されれば、これで末永く多くの人の鑑賞がかなうと安堵するのが常だったが、最近では収蔵品だからと単純に安心できない事例が増えている
▼先月には、今秋休館したDIC川村記念美術館(佐倉市)が所蔵していた8点の絵画や彫刻が、ニューヨークでオークションにかけられた。落札総額は約165億円にのぼり、その高額ぶりが話題を呼んだ
▼落札金額が最も高かったのは、モネの代表作「睡蓮」の約70億5000万円。このほか、シャガールの「ダビデ王の夢」が約41億円、ルノワールの「水浴する女」が約16億円、マティスの「肘掛椅子の裸婦」が約10億円で落札された
▼いずれの作品も川村記念美術館を訪れるたび、最初の展示室で来館者を迎えてくれた名品ばかりで、そんななじみの作品が散逸してしまうのは、何とも複雑な思いに駆られる
▼同館は、保有する美術品384点のうち約280点を売却する方針で、今回の競売はその一環となり、同社が年内の売却額として見込んだ「少なくとも100億円」を大きく上回った。日本企業が保有する美術品の大規模売却が海外オークションにかけられるのは異例という
▼同じ先月、香港で開かれたオークションでは、江戸時代の浮世絵師・喜多川歌麿の肉筆画「深川の雪」が、日本の個人コレクターに落札された。肉筆画3部作のうち国内に唯一残る作品で、神奈川県箱根町の岡田美術館が収蔵していたが、約11億円で落札され、歌麿作品の落札額では最高値となった。3部作のうち他の2作はすでに米国の美術館が所蔵しており、今回の落札作品も海外流出が懸念されている
▼10月に起きたパリのルーブル美術館の盗難事件も、まるで映画のような話で世界を驚かせた。その後、実行犯4人全員が拘束されたが、盗まれた宝飾品8点の行方は知れず
▼散逸の経緯はさまざまだが、作品の行く末を危惧せざるを得ない。どんな流転が待つにせよ、ゆめゆめ作品が傷つくことのないよう祈りたい。

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